- SESテスターから転職を決意していないのに準備を始めていいのか迷っている
- テスト実行しか経験がなく、転職するにはスキルが足りないと感じている
- 転職準備を始めたいが、自己分析や転職エージェント探し等、どれを先にやるべきかわからない
SES2社で約10年のテスターを経験し、現在QAエンジニアとして働く筆者が、転職準備で最初にやるべきことを順番に解説します。
転職準備は転職するぞと決意してからするものではありません。今の仕事を続けながら、リスクゼロな上に自分でできることから始めるだけでプラスです。この記事を読み終えた後、今日から動き出せる具体的なアクションが見えてきます。

仕事を続けながらリスクゼロでできる転職準備を始めましょう。
転職準備を始める前に知っておくべきこと


転職準備と聞くと転職を決意してから動くものと感じる方が多いですが、そうである必要はありません。準備は転職を決める前から始められますし、むしろ早く始めるほど選択肢が広がります。まずこの記事を読む上で知っておいてほしいことを3つお伝えします。
なお、この記事では便宜上「SESに属してテスト実行を主な業務とする人」をSESテスター、「テストベンダーや事業会社に属し、ソフトウェアの品質に関わる業務を担う人」をQAエンジニアと呼んでいます。
SESテスターとQAエンジニアは職種名として厳密に区切れるものではなく、所属する企業・環境によって求められる役割が変わります。この記事での使い分けはあくまで便宜的なものです。
転職の決意より先に情報収集
転職準備の最初の一歩は、転職を決意し行動に移すことではありません。最初に取るべき行動は情報収集です。具体的な内容として以下のような行動が挙げられます。
- 自分の市場価値を知ること
- QAエンジニアという仕事を具体的にイメージすること
- 今の経験が転職市場でどう評価されるか大まかに把握すること
準備を始めたら転職しなければいけないという義務はどこにもありません。情報を集めた上で今は動かないと判断することも立派な選択です。まず情報収集として動き始めることが、将来の選択肢を広げる最初の一歩になります。
SESテスター経験者はゼロからのスタートではない
あなたが「テスト実行しか経験がない自分には、転職できるスキルがない」と感じていれば、その認識は正確ではありません。テスト実行経験は、QAエンジニアへの転職において確かな土台として機能します。
バグを見つける視点、仕様書を読み解く経験、チームの中で報告・連携する力。これらは日々のテスト実行の中で自然に身についてきたものです。QAエンジニアへの転職で求められる人物像として、採用側が共通して挙げているのはスキルよりもむしろ以下のようなマインドセットです。
- ソフトウェア品質への強い関心
- チームメンバーや顧客とのコミュニケーション力
- 継続的な学習意欲
テスト実行経験を持つあなたは、完全未経験者とは異なるスタートラインに立っています。
準備を始めるタイミングは今すぐが正解な理由
転職準備を始めるタイミングを考えるに当たり、完璧な準備が整ってからというスタンスは避けたほうがいいかもしれないです。なぜなら、完璧な状態を目指そうとするとスキルや経験の不足を理由に準備を後回しにしてしまい、いつまでたっても転職活動が始まらないまま無駄な時間を過ごしてしまうからです。
20代〜30代前半においては、転職市場においてポテンシャルと経験が両立する時期です。この時期を過ぎると採用側が求める即戦力水準が上がり、転職の選択肢が狭まっていきます。準備を始めるのに必要なのは、完璧なスキルではなく動き始めるという判断だけです。
最初にやること①:自分の経験を棚卸しする


転職準備で最初にやるべきことは、今の自分が持っているスキルや経験を整理をすること(棚卸し)です。棚卸しをすることで「自分には何もない」という思い込みが崩れ、次にやるべきことが見えてきます。
【参考例】テスト実行経験をQAエンジニアの言葉に変換する
テスト実行経験は、そのままでは転職市場で評価されにくいですが、これまでやってきた業務の見方を変えるだけで解釈が大きく変わります。テスト実行を例にした場合、これまでやってきた作業を以下のように変換できます。
重要なのは「何をやったか」ではなく「どのような役割を担い、何に貢献したか」という視点で書き換えることです。また、貢献について書く際は具体化な数値や実績を明確にするところがポイントになります。例えば、これまで〇〇という作業に1時間がかかっていたところ、ある改善を実行したことで30分短縮できたと感じです。
この変換作業が、職務経歴書を書く上での土台になります。
職務経歴書に書ける経験と書けない経験を仕分ける
棚卸しの次のステップは、これまでの経験を職務経歴書に書ける経験と書きにくい経験に仕分けることです。
書ける経験の例として、テスト実行・仕様書作成・バグ報告・進捗報告・チームとの連携・顧客先での業務対応などが挙げられます。一方で書きにくい経験の例として、単純作業の繰り返し・指示待ちで動いていただけの業務・成果が見えにくかった案件などがあります。
書きにくい経験でもその業務から何を学んだか、どう工夫したかという視点を加えると書ける内容に変わります。例えば、単純なテスト結果チェックを担当したという経験も、大量のデータを正確かつ効率的に処理する作業を担当し、ミスなく納品に貢献したという形で言語化できます。
業務の棚卸しで価値ある経験を見つける
棚卸しを行うことで、自分が当たり前だと思っていた経験が、実は評価される経験だったということに気が付きます。
テスト実行を長く続けてきた人は、仕様書を読んで意図を理解する力・バグを論理的に整理して報告する力・期限内に決められた品質で成果物を出す力を自然に身につけています。これらはQAエンジニアとして働く上で直接活きるスキルです。
棚卸しは特別なツールがなくても始められます。まずノートやメモアプリにこれまで担当したプロジェクト・業務・気づいたことを時系列で書き出すだけで十分です。完璧に仕上げる必要はなく、思い出せる範囲で書き出すことが最初の一歩です。



テスト実行の現場で身についた力は、QAエンジニアとして直接活きるスキルです!
最初にやること②:QAエンジニアの仕事を具体的にイメージする


転職準備を進める上で、自分が目指す仕事のイメージを具体的に持っておくことは非常に重要です。漠然とQAエンジニアになりたいという状態では、何を準備すればいいかが見えてきません。ここではQAエンジニアの仕事内容・テスターとの違い・採用側が求める人物像を整理します。
最初に伝えておくと、テスターとQAエンジニアとの間で明確な仕事の線引きは存在しません。人によってはテスターもQAエンジニアもテストエンジニアも同じ意味とみなしている人もいます。
記事全体を通して、SESに属しており、テスト実行が役割である人を包括して一律でテスターと呼び、ソフトウェア品質に関わる様々な業務に携わる人を包括してQAエンジニアと呼ぶようにしています。
SESテスターとQAエンジニアの業務の違いを把握する
SESテスターとQAエンジニアの最大の違いは、対応する業務領域の幅です。SESテスターはテスト実行が主体であり、QAエンジニアはソフトウェアの品質に関わるあらゆる活動に携わります。
なので、QAエンジニアはテスト実行も担当しますが、テスト実行はあくまで業務の一部に過ぎず、テスト計画の策定・テストケースの設計・不具合分析・テスト完了報告・品質改善提案といったソフトウェア品質に関わるあらゆる活動に対して関与が求められます。
テスターとQAエンジニアの違いについては、こちらの記事で図解を交えて詳しく解説しています。まだ読んでいない方はあわせてご覧ください。


企業が求めるQAエンジニアの人物像を把握する
20代から30代前半にかけ、QAエンジニアを採用する企業が共通して求める人物像は、スキルよりマインドセットの部分が大きくなりがちです。複数の企業の募集要項を分析すると、以下の要素が共通して挙げられています。
- 品質への関心・ユーザー視点で考えられること
- 顧客・開発者・テストメンバーと円滑に連携できるコミュニケーション力
- 仕様や業務を構造的に理解できる論理的思考力
- 新しい技術やテスト技法を継続的に学べる学習意欲
- ルールやプロセスを守りながら改善提案もできる姿勢
テスト上流工程(計画・設計)経験が5年以上、ソフトウェアテストの資格保有といったスキル要件はあくまで歓迎要件であり、必須要件ではありません。SESテスターとして真面目に現場をこなしてきた人が持っている素養と、求める人物像の多くの部分が重なっています。自分がどの項目を満たしているかを確認するだけでも、転職の現実感が変わってくるはずです。



企業側が重視するのはスキルよりもマインドセット寄りで、SESテスター経験者と重なる部分が多くあります。
自分が目指すQAエンジニア像を言葉にする
QAエンジニアといっても働く環境は様々です。第三者検証企業・SIerの検証部門・事業会社のQA部門・2次受けのSESなど、テスト設計に関われる環境は複数存在します。どの環境で働きたいかによって、準備すべきこと・アピールすべき経験が変わってきます。
この段階で完璧に決める必要はありませんが「テスト設計に関わりたい」「上流工程から品質に携わりたい」「特定の業界ドメインでQAを深めたい」といった方向性を言葉にしておくことで、エージェントへの相談や求人選びの際に軸が定まります。ノートに箇条書きで書き出すだけで十分です。
最初にやること③:QAエンジニアに必要なスキルを学んでみる


転職準備として「資格を取らなければいけないのか?」と考える方がいますが、開発エンジニアへの転職でよく聞く基本情報技術者やJava Bronze等の資格取得を目指す必要はありません。資格取得より前にテスト上流工程の仕事がどんなものかを体験してみることが先です。学んでみた結果、面白いと感じられれば、その先に資格という選択肢が自然に見えてきます。
テスト設計技法を学ぶ
テスト設計の代表的な技法に以下の技法が挙げられます。
- 同値分割法
- 境界値分析
- デシジョンテーブル
- 状態遷移
難しく聞こえるかもしれませんが、考え方の基本はシンプルです。
例えば同値分割法は「同じ結果になる入力値をグループに分けて、代表値だけテストする」という考え方です。境界値分析は「グループの境界にある値は特にバグが出やすいので重点的にテストする」という考え方です。テスト実行の現場で「なぜこのテストケースがあるのか」と感じたことがある方は、実はこの考え方に触れていた可能性があります。
まずは書籍やUdemyの入門コースを使って、実際に簡単なテストケースを自分で設計してみることをおすすめします。手を動かすことで「テスト設計とはどういう仕事か」のイメージが一気に具体化しやすいです。学習リソースの選び方は後述します。



まず試してみて面白いと感じられれば、学習を続ける動機になります。
QAエンジニア転職に使えるソフトウェアテストの資格を知る
テスト設計の学習や情報収集を進めていく中で、ソフトウェアテストに関連する資格が見えてきます。ここでは代表的なものを2つ紹介します。
JSTQB(Japan Software Testing Qualifications Board)は、ソフトウェアテストの知識を体系的に証明できる資格です。Foundation Levelは比較的取り組みやすく、第三者検証企業を中心にQAエンジニアの業界標準として広く認知されています。転職活動においてこの資格を持つことを歓迎している企業も多く、テストに関する知識を持っていることを客観的に示せる点が最大のメリットです。
IVEC(Intelligent Verification Engineer Certification)は、JSTQBが知識の証明に重きを置くのに対し、実務に近い形でのスキルを評価する資格です。記述式の試験形式で、実際の現場で通用する力を証明できます。
これからの資格は転職前に取得必須というわけではありませんが、学習を始める過程でどちらかに挑戦してみることで、他の人との差別化につながります。



転職前に必ず資格取得する必要はありません。学習の過程で挑戦を検討すれば十分です。
学習リソースの選び方
テスト設計の学習に使えるリソースは大きく3種類あります。自分の学習スタイルに合ったものを選ぶことが継続のコツです。
書籍は体系的に学びたい方に向いています。特に「ソフトウェアテスト技法練習帳」はテスト設計技法を問題演習形式で実践的に学べる一冊です。この本は実際に手を動かしてテスト技法の実践を通し、理解を深めるための入門書として定評があります。
Udemyは動画で学びたい方に向いています。ソフトウェアテスト・QAエンジニア関連のコースが複数あり、セール時には大幅に割引された価格で受講できます。まず1コース受けてみるだけでソフトウェアテストの全体像が掴めます。
公式シラバスはJSTQBを目指す方向けです。JSTQB公式サイトで無料公開されており、試験範囲を把握した上で学習の方向性を決める際に活用できます。
最初にやること④:転職エージェントに情報収集として登録する


自己分析・仕事のイメージ・スキルの学習と準備を進めてきたら、次のステップとして転職エージェントへの登録をおすすめします。ただし繰り返しになりますが、登録は転職の決意ではありません。自分の市場価値を客観的に知るための情報収集として使うだけで十分です。
転職エージェント登録は市場価値を知る手段である
転職エージェントへの登録後、担当者との無料面談を通じて自分の経験がどう評価されるかを把握すること、どんな求人があるかを確認すること、転職するとしたら何を準備すべきかを相談することです。これらは全て無料で、登録後に転職しないと判断することも自由です。
自分の経験を棚卸しした内容・QAエンジニアの仕事をイメージした内容を担当者に話すだけで、「今の経験で応募できる求人があるか?」「転職するとしたら何が足りないか?」という具体的なフィードバックをもらえます。転職サイトで求人を眺めているだけでは得られない情報を、担当者から直接聞けることがエージェントを使う最大のメリットです。
転職エージェントの種類と選び方
転職エージェントには大きく総合型と特化型の2種類があります。QAエンジニアへの転職を目指す場合、まずIT特化型への登録を優先することをおすすめします。
IT特化型はIT・エンジニア領域の転職に特化しているため、ITエンジニア関連の求人を多く保有しており、テスター経験者が応募できる求人の選択肢が広がります。一方、総合型は求人数が多く幅広い選択肢を持っているため、IT特化型と並行して使うことで求人の母数を増やせます。
転職エージェントは複数社に登録して比較することをおすすめします。担当者との相性はエージェントによって異なるため、1社だけに絞ると自分に合った担当者に出会えない可能性があります。IT特化型に1〜2社・総合型に1社という組み合わせが現実的です。
私が転職活動で感じたエージェントのリアル【体験談】
実際に転職活動を経験した立場から、エージェント活用のリアルをお伝えします。
私が最初に登録したエージェントの担当者は、思ったより丁寧に話を聞いてくれました。なぜ転職したいのかを深く掘り下げてくれて、「テスト実行経験しかない自分でも話を聞いてもらえた」という感覚は転職活動を進める上での自信になりました。
一方で複数のエージェントを並行して使った際、担当者によってサポートの質に明確な差があることも実感しました。IT領域への理解が薄い担当者に当たると、テスター経験者に合わない求人を紹介されたり、年収交渉で十分なサポートを受けられなかったりするケースがあります。担当者との相性が合わないと感じたら、担当者の変更を依頼するか別のエージェントに切り替えることをためらわないでください。
最初から完璧なエージェントを見つけようとしなくていいです。まず1社に登録して話を聞いてみるだけで、自分のキャリアの現在地が見えてきます。



担当者との相性が合わなければ変更を依頼するか、別のエージェントに切り替えて問題ありません。
転職準備を進める上でよくある疑問
在職中でも転職準備を進められるか
在職中でも転職準備は十分に進められます。むしろ在職中に準備を進める方が、経済的な余裕を持ちながら焦らず転職先を選べるため、結果として自分に合った転職先を見つけやすくなります。
この記事で紹介した準備(経験の棚卸し・QAエンジニアの仕事理解・テスト設計の学習・エージェントへの登録)は全て、今の仕事を続けながらできます。エージェントとの面談も平日夜間や土日に対応しているケースが多く、現職に影響を与えずに進められます。
スキルが足りないと感じている場合はどうするか
「テスト実行しか経験がなくてスキルが足りない」という感覚は、転職準備を始める前の多くの人が抱えています。ただし、QAエンジニアをポテンシャル採用する企業が共通して重視するのはスキルよりもマインドセットです。
スキルが足りないと感じている場合は、まずエージェントに相談することをおすすめします。「今の経験で応募できる求人があるか」「何を準備すれば転職の可能性が上がるか」を担当者から直接聞くことで、自分が本当に何を補うべきかが明確になります。自分の判断だけで「スキルが足りない」と決めつけずに、まず客観的な意見をもらうことが最初のステップです。



スキルが足りないと自己判断せず、まずエージェントに客観的な意見をもらうことが先決です。
準備期間はどのくらい見ればいいか
転職準備から内定までの期間は、個人の状況によって異なりますが、一般的に3〜6ヶ月を目安にするケースが多いです。ただしこの期間はあくまで目安であり、準備が整ってから転職活動を本格化させる必要はありません。
エージェントへの登録・面談は準備の初期段階からできます。「準備が整ったら登録しよう」と考えているうちに時間だけが過ぎていくケースが多いため、まずエージェントに登録して現状を把握することを優先してください。準備と並行して情報収集を進めることで、転職活動全体のスピードが上がります。

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